経歴
仕事内容
ハバキ・刀装金具(主に下地)制作です。
ハバキは、刀身を鞘の中で泳がないよう安定させる役割と、柄と鐔(つば)を挟みこんで刀身を固定する役割を同時に持つ金具です。
刀身が出来上がった後ハバキを制作する流れですが、まずハバキがないと鞘も研ぎも柄巻も仕事ができないので全部止まってしまいます。
刀装金具に関わることもありますが、白銀師の仕事は形をつくるというところで、下地作りをした後、彫金師・彫師が仕上げて彫りをします。
職人になったきっかけ
京都伝統工芸大学校在学中、刀職技能訓練講習会に参加し刀職の世界を知ったことがきっかけです。
地元に刀鍛冶が住んでいまして、小さい頃から展示会を見る機会があり接点はありました。
物作りを仕事にしたいという思いがあり、中でも金属の加工に興味があったので専門の学校へ進みました。
在学中先輩が金属の板を切り抜いて鐔(つば)を作っているのを見て興味を持ち、勧められて講習会に参加しました。
参加して初めて白銀師というハバキの専門職について知りましたが、この講習会をきっかけに仕事がいただけるようになり、現在は白銀師として活動しています。
白銀師とは
主にハバキや、金具の下地を作る職人のことです。
銅、銀、金を主な材料として、それを金槌で叩いて伸ばしたり曲げたりロウ付けでくっつけたり。
ヤスリで削って整えて仕上げます。
同じ金属加工を専門とする金工師との境界線が難しいところですが、金工師は鏨(たがね)をメイン、白銀師はヤスリをメインで使うと考えると違いがわかりやすいかなと思います。
白銀師は金属を溶かして純度を調整し、合金を作ることもします。
ハバキが硬すぎると合わせた時に刀の方を傷つけてしまうので、強度と加工性のバランスが大事です。
今は合金の板を作ってくれる業者さんから購入することもできますが、私は自分で扱いやすい配合で調整して使っています。
白銀の魅力
金属の塊から一つの金具を自分で作ることができることです。
銅板の塊から、自分で叩いて形を作ってヤスリがけをして完成させます。金槌で叩いて作るところが1番好きなところです。今であれば手作業でなくてもいいところはあるのですが、昔の職人と同じように作って、同じような物が作りたいと思っています。
叩くことで金属の性質が柔らかくなったり硬くなったりする感覚や、加工や微調整が自分の手で可能であるところが面白いと思っています。
ここが見所
刀に調和しているかどうかでしょうか。
綺麗だとか細工の細かさといったところに加えて、時代や地域、製作者の背景などを考証して意匠の意味を想像したり、
疑問に思って突っ込んで見てもらえたらもっと面白くなると思います。
今後の展望
各地域のハバキ・金具を作りたいです。
お国ハバキといって、諸藩で考案された様々な意匠のハバキがあります。
ハバキは消耗品ですので、作り替えたら古い物は材料になるか廃棄されてもう残っていないことが多いです。
なので、文献などで調べ、各地域の決まり事に沿ってどんな要望があっても自分で作れるようになりたいです。
将来的には自分の調べたことを整理して、本としてまとめられたら良いなと思います。
あなたの日本刀の楽しみ方
刀の姿から金具、拵を想像することです。
お国ハバキであったり、縁頭の寸法の研究も昔の人がやっていたことを知りたくて、想像して掘り下げている感じです。
その他
受賞歴
令和3年度 公益財団法人 日本美術刀剣保存協会 現代刀職展
・白銀の部 日本美術刀剣保存協会会長賞
・彫金の部 努力賞
趣味 空想旅行(地図を見ながら各地に行った気になること)
金属の場合は、歪みや失敗や成功というものは科学的に説明できてしまうというところがあり、
自分がやった通りにしかならない所が面白いと思っています。「無言で傷つけにくる」という表現が仲間内であり、
昔の超絶技巧なんかの名品を見にいくと、自分のできなさ加減を知らされて傷ついて帰ってくるということです。笑
そういう果てがないところが辛さでもあり、面白さでもあります。
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