経歴
静岡県で日本の伝統建築技術を学んだのち、一級建築士事務所を主宰。
昔から興味があった日本刀の世界に入るため、建築の仕事のかたわら鞘制作などの技術を習得、現在は鞘師として刀職の活動に専念している。
仕事内容
日本刀の白鞘や拵え鞘下地の工作、修理・修復などが鞘師の主な仕事です。その他木工芸品の作製、修復等も行っています。
白鞘の工作は材料となる朴の木を準備するところから始まります。朴の木を製材して板にし刀身の反りに合わせて木取りし、それをノコギリで二つに割ります。ノミを使って朴の木を掻き入れて刀身が納まるところを彫り、お米を練って作った続飯(そくい)で貼り付け、カンナで削って形を整え、最後はトクサやムクの葉で磨いて白鞘が完成します。
職人になったきっかけ
子供のころから日本刀が好きでしたが、正直よく分からない世界だなと思っていました。
ある日、日本刀を手に入れ、研師さんに研いでもらいました。その時に色々教えてもらったことがこの世界に入ったきっかけでした。当時は刀鍛冶と研師くらいしか知りませんでしたが、色々な刀職者がおり、すべて分業でやっているということを教えてもらい、世界が広がりました。
もともと絵を描くことや物を作ることが好きでした。また木材を扱う物づくりをしていたので鞘師を目指しました。
鞘師とは
鞘師とは古来受け継がれてきた日本刀を後世に残す大切な仕事です。鞘がないと良い状態で刀身を保管することはできません。また鞘の作りが悪いと刀身を錆びさせてしまいます。
日本刀は刀職者たちの色々な思いが詰まった作品なので、それが後世まで残るような鞘を作らなければなりません。決して気を抜くことができない大切な仕事だと思って日々取り組んでいます。
鞘の魅力
鞘はかつて消耗品として使われていました。現存しているものはとても少なく大変貴重です。鞘・柄・鐔などを組み合わせた拵えは工芸品として大変素晴らしいものです。大名のものから下級武士や豪商のものまであり、時代や用途による違いが魅力です。
白鞘は休め鞘・油鞘などといわれ本来、刀を保存するための道具でした。今は白鞘も美術的美しさを求められるので、そこも魅力です。
ここが見所
多くの拵えを集めていた愛刀家曰く、良い鞘は刀が錆びることはないそうです。これはどこにも鞘当りがないということで、そのような鞘を作る必要があります。白鞘に流派はない、といわれるように作り手により色々な姿形や作り方があります。刀身の反りに合った曲線は大変美しく、とても面白いものです。実は地方毎にも特徴的な形があったり、流行り廃りなんかもあったりします。
白鞘は経年による色の変化があるのでそこに注目しても面白いと思います。
今後の展望
残念ながら鞘師は他の刀職さんに比べてあまり知名度がありません。いろんな活動を通じて鞘師という職人がいる、ということを皆様に知ってもらえるよう今後も精進していこうと思っています。
Instagramもやってますので是非チェックしてみて下さい。
あなたの日本刀の楽しみ方
私は八王子の郷土刀・下原刀を収集しております。下原刀は如輪杢という肌が特徴的で、実用刀として多くの武士に愛用されてきました。下原刀の出来の良いものは相州上工に見間違われるほどです。実用刀であり、無骨でどこか田舎くさい雰囲気が好きでよく眺めています。
その他
日本刀文化振興協会会員
一級建築士